V.東洋の魔女(2)

「東洋の魔女」と言えば、その代名詞はなんといっても「回転レシーブ」です。 現在では当たり前のプレーですが、初めて目にした関係者にとっては「発明」とまで呼ばれた技術だった そうです。 ところが、私の目にはこの「回転レシーブ」はあまり強く印象に残りませんでした。 この試合を観戦する上で私が注意したのは、現在とはルールが異なるという点でした。 得点の獲得方法・オーバータイムス・オーバーネットなどがその代表例です。 ルールが異なれば当然、その戦術も変わってくるわけですから。 映像を見る限り、河西さんが語っていたとおりその動きは大きくありません。サーブレシーブに回る時を 除いて、コートの中心に立ち、まさに司令塔そのものです。 なぜなら、日本チームのレシーブはほぼ正確にセッターである河西さんの元へ返っていたからです。 これが正確なトス、そしてスパイクへとつながり得点を重ねます。 これに対し、対戦相手のソ連チームはサーブレシーブが乱れ、なかなかセッターへ返りません。 これでは、トスが乱れ攻撃の組み立てがうまく行くはずがありません。 守備は正確なサーブレシーブ、そして攻撃はボールの軌道が変化するサービスによって相手チームのサー ブレシーブを崩す。 たったこれだけのことですが、徹底されていました。 当たり前の事を当たり前に行なうことは非常に難易度の高いことです。 この番組は後日談も含め、ドキュメンタリータッチで構成されています。 どうやってこのような素晴らしいチームが誕生したのかも描かれています。まさに永久保存版でしょうか。

(覆面ライター 辛見 寿々丸)