I.再び世界一を
春の待ち遠しい季節になりましたが、年初から「日本復活」を予感させるような出来事が続きました。
まずは、テニスの全豪オープンで史上最年長で勝利を挙げたクルム伊達公子さんです。彼女のかつての
世界ランキング最高位は4位でしたが、今回の快挙は紛れもなく世界一です。若い頃には世界ランキン
グでの1位を目指した彼女であったのかもしれませんが、別の形であれ世界一を達成したのは見事とし
か表現のしようがありません◆さらに続くのは、NYタイムズに掲載されたクルーグマン氏のコラムで
す。クルーグマン氏と言えば、08年にノーベル経済学賞を受賞し世界で最もその発言に注目が集まる
学者の一人です。その彼が、なんと「アベノミクス」を大絶賛したのでした。その中で「低迷した経済
を真っ先に経験した日本が、今度はそこから脱する方法を他の国々に示すことになるかもしれないのだ
。」と結んでいます。同氏は、「安倍首相はお粗末な通説を打破しつつあり、もしそれが成功すれば、
何か目覚ましいことが間もなく起こるかもしれない」と述べています。果たして、彼の言う「お粗末な
通説」というのは一体どういうことを指しているのでしょうか◆彼によれば、雇用創出のための行動に
関する提案はいずれも、その副作用の大きさから拒否されてきたと主張しています。金融政策として紙
幣を増刷すればハイパーインフレが起こるだろうし、財政政策として政府支出を増やせば、財政赤字が
拡大し国債の暴落が起こるから、結果として何もできない。何もできないのだから、何もすべきではな
い。というのが「お粗末な通説」の意味することのようです。確かに副作用についてはもっともと言え
ばそれまでなのではありますが、それではあまりに芸がなさすぎます◆低迷する経済に悩む各国ですが、
皮肉にもそういう意味では日本は各国の先輩です。バブル崩壊後、ずっと不況に苦しんできたのが我が
国です。クルーグマン氏の指摘を待つまでもなく、昨年末から今年に入っての市場のマインドは大きく
変化したように感じられます。インフレによって政府債務を実質的に減らすことは理論上可能であるし、
円相場の下落も一定水準までは歓迎されるはずです。かつては「ジャパンアズナンバーワン」と呼ばれ
た我が国です。冒頭の伊達さんではありませんが、伝統的な経済指標では示すことのできない指標にお
いて世界一を再び目指す方法や手法があるはずです。