I.憲法制定の原点を考える
昨年からよく耳や目にするが「アベノミクス」なる言葉です。ご承知のとおり、昨年末二度目の首相に
就任した自民党の安倍総裁が構想する経済政策です。その内容は、大胆な金融緩和によりデフレや円高
からの脱却を図る金融政策と、大型の公共工事の推進により景気向上を図る財政政策が大きな柱といわ
れています◆その一方で、安倍首相は憲法改正論者としても有名です。前回の首相在任時には、国民投
票法の改正を実現して、その布石を打ちました。今回は、憲法について少し考えてみました◆そのきっ
かけとなったのは、現日本国憲法の草案作成に携わったベアテ・シロタ・ゴードン氏の訃報が年頭に報
じられたことでした。同氏が亡くなる直前まで気にかけたのは、「平和」と「女性の権利」だったそう
です◆首相に限らず、現行の日本国憲法はGHQの押し付けだとする改憲派もいれば、日本の憲法は世
界のモデルとする護憲派も存在します。確かに時代の変化とともに憲法を見直すことの必要性を否定す
ることはできませんが、制定後一回も改正が行なわれたことがないことも事実です◆憲法改正といえば、
常に議論となるのが第九条の問題です。特に自衛権については明文規定がないため憲法解釈でその行使
が可能かどうかに終始する結果となっているのが現状です。この解釈によれば、国際法上当然に個別的、
集団的な自衛権は有するとされているものの、集団的自衛権については憲法で禁じているというのが政
府の見解となっています◆この解釈を変更すべく集団的自衛権の行使を検討するという動きが過去にも
ありました。個人的な意見ですが、法律の解釈で不可能なことを可能にするという考えは非常に危険で
す。戦後体制からの脱却も重要なことかもしれませんが、私たち一人ひとりがキチンとした歴史認識を
持つことはそれ以上に重要です。もちろん、全員が共有できるような認識はありえないのかもしれませ
ん◆とすれば、日本国憲法制定の立法趣旨=原点をよく考えてみなくてはなりません。ゴードン氏は何
を思い、この草案を策定したのか。改正、護憲いずれの立場をとるにせよそこにこめられた思いは何だ
ったのかについて再度考えてみた上での議論が必要です。私たち日本人は古来から、国外の様々な技術
や智恵を学んでそれを吸収し、固有のすばらしい文化を築いてきたという歴史を持っているのですから。