I.議論のダイバーシフィケーション
やっとなのか、それともついにと申し上げるべきなのか。国連総会でパレスチナが「オブザーバー国
家」に格上げする決議案が採択されました。採決では、安保理の常任理事国の対応が異なりました。
米国は反対、フランス・中国・ロシアは賛成、そして英国は棄権という結果になりました。他の主要
国では、日本・インドは賛成、ドイツは棄権しました◆もうひとつ、最近ビックリしたことと言えば、
米国では「原発を持たないリスク」についての研究や論文が数多くあることを耳にしたことです。「
原発を持つリスク」ではなく、まったくその逆です。どういうことなのでしょうか◆モータリゼーシ
ョンにより、自動車が普及するのに伴って交通事故件数が増え、排気ガスによる大気汚染なども大き
な問題として取り上げられてきました。にもかかわらず、「脱自動車運動」というのはあまり聞いた
ことがありません。それどころか、現在では交通事故を未然に防ぐための研究開発が各メーカーで行
われていますし、すでにそういった装備を搭載した自動車も販売されています。また、大気汚染の問
題についても大きく改善されてきました◆さて、テーマを原発に戻します。世界中の研究者や学者の
中での共通認識は「地球温暖化による海面水位の上昇」です。何年後に何メートルという具体的な数
字は議論の余地はあるにせよ、海面水位の上昇については議論の余地はありません。東京をはじめと
する各国の主要都市は沿岸部に存在します。いつかは水没する可能性があるという理論です◆実は、
先ほどの「原発を持たないリスク」というのはこういった観点からのアプローチだったのです。万能
とは言えないが、原発により地球規模での温暖化が多少なりとも防げるのではないのかという研究で
す。日本のような地震多発国ではなかなか考えにくい発想ですが、それはそれとして十分議論の余地
はありそうです◆先の衆院選でも、原発を巡って様々な議論がありました。しかし、反対や容認の議
論の中で「地球規模での温暖化」や「温室効果ガスの削減」といった点からの議論はほとんどありま
せんでした。非常に残念なことです◆グローバル化した現在では、わが国の経済や財政の問題を国内
のことだけを議論していても成り立たないのは誰もがわかっていることだと思います。であれば、国
内からの目線だけではなく、時には国外からの目線で物事を考えることが非常に重要に思えてきます。
一つの事柄を様々な角度や立場から考えてみるということです。と同時に、多種多様な考えに耳を傾
ける必要があるのではないでしょうか。