I.予算編成と金融政策
つくづく安易な増税は怖い!と感じたのは、今般の復興増税です。この増税は復興予算の財源を確保す
るために行なわれたはずなのですが、その予算の流用たるや、もはや国民の批判の域を超え、あきれる
ほどです◆その原因としては、19兆円という総額を先に決定し、具体的な中身は後から積み上げると
いう手法をとったことにあります。ここぞとばかりに各省が要求した結果がその顛末です。つまり、起
こるべくして起こったということに他なりません。換言すれば、構造的な問題ともいうことができます
◆そもそも、霞ヶ関では予算編成を偏重するという傾向があります。予算はあくまでも予算であり、そ
の執行に対する評価が必要なのは申し上げるまでもないでしょう◆これから、平成25年度の予算編成
も大詰めを迎えます。ところが、国の財務書類のうち貸借対照表については平成22年度のものが最新
版として財務省のホームページに掲載されています。平成23年度のものがあればともかく、これでは、
来年度の予算編成に資することは期待できません。とにもかくも、予算編成ばかりを偏重するという体
質自体を改める必要があるでしょう◆もう一つ気になるのが日銀についてです。金融緩和が不十分だと
して、このところ何かと風当たりの強い日銀ですが、その日銀の金融政策決定会合に政府から前原経財
相が出席しました。長引くデフレからの脱却を目指す政府の思いが強かったものと思われます。デフレ
の克服なくして、消費税の増税はありえないという判断も当然働いたはずです◆そんな日銀が最近注視
しているのが、中国の人口変動と不動産価格の推移であることが報じられました。中国も人口減少時代
の入口にいるわけであり、このところの中国経済の失速は顕著です。◆最近よく目にする用語に「人口
ボーナス」「人口オーナス」というものがあります。「人口ボーナス」とは生産年齢人口が増加し経済
成長の要因とされるものであり、「人口オーナス」とはその逆です◆わが国は、完全に後者にあるわけ
ですが、いよいよ中国もその時期に突入目前です。日銀が中国の不動産価格の推移に興味を持つのも理
解できますが、国内経済に対してももっと踏み込んだ良い知恵を期待したいものです。