V.歴史に残る名試合

今年開催されたロンドン五輪。その開会式に、モアメド・アリ氏の姿がありました。 彼の姿を見るのは、聖火の最終ランナーを務めたアトランタ五輪以来かもしれません。 アトランタではパーキンソン病と闘う同氏の姿は人々に大きな感動を与えました。 同氏は20世紀を代表する名ボクサーの1人であることには間違いありませんが、歴史に残る名試合の一つに ジョー・フレイジャー氏との死闘があります。 モアメド・アリ氏はローマ五輪の金メダリスト、ジョー・フレイジャー氏は東京五輪の金メダリストです。 両氏ともその後プロに転向して、いよいよ決戦の舞台が実現したのでした。 ファンの予想通りその様子は、後世に長く語り継がれるものとなったのです。 当時の米国はベトナム戦争の真っ最中にあり、アリ氏はその徴兵を拒否したため無敗のまま王座を剥奪されまし た。そして、その復帰戦がこの試合であり、初めての敗戦となったのです。 階級数が少なく、しかも4年に一度の五輪のメダルは、やたら階級数の多い現在のプロボクシング界の世界王座 よりも価値があるといわれます。 今回の五輪では日本選手も見事メダルを獲得することができましたが、そこにはプロボクシング界の支えも非常 に大きかったと聞きます。 バンタム級の清水選手、ミドル級の村田選手ともプロ転向するかどうかは不明なのに加え、階級が異なるので、 かつてのアリ氏対フレイジャー氏のような両雄の対決は実現しそうにはないのが残念ではありますが。

(覆面ライター 辛見 寿々丸)