I.デフレ脱却に向けた金融政策を

世界が4年に一度の五輪とその余韻に沸く中、世界経済は正念場を迎えそうな様相を呈してきました。まず、 ユーロ圏の債務危機。そして、そのユーロ圏に輸出を依存する中国の景気減速が鮮明になってきました。さら に、米国は7月の雇用統計が市場予想を上回ったとはいえ先行きの不透明感はぬぐえません◆わが国はといえ ば今後は増税のラッシュです。消費税は別としても、今年4月の復興特別法人税、6月の住民税増税、10月 の地球温暖化対策税、2013年1月の復興特別所得税、2014年6月の住民税復興増税と続きます◆財政 再建に増税が必要だというならば、景気回復には増税の影響についての考慮も必要であることも同様です。一 部楽観論もあるようですが、日本の景気は決して良くないというのが多くの方の共通認識ではないでしょうか ◆早期に財政政策に一定の目標とめどをたてるためには、過去の検証も必須だと思います。完全な検証は不可 能だとしても、可能な限りのデータや証拠に基づき、増税と財政支出のバランスをどうコントロールすれば良 いのかの決断が求められます◆今後、さらに重要と思われるのは国の掲げる経済成長率の実現に向けた具体策 をどうするのかという点です。その中でも金融政策の見直しができるのかどうかについて、日銀の対応が注目 されます。そもそも「失われた20年」のスタートは、バブル経済直後の極端な金融引き締めにその一因があ ったのではないかと個人的には考察します◆米国の中央銀行には、その役割として雇用の安定という項目があ るそうです。雇用の安定=良好な景気という構図になるわけですから、単に物価の安定にとどまらず積極的な 行動が求められるわけです。残念ながら、わが国では法律上そういった責務が日銀にはありませんから、同様 なことを求めるのは無理なのかも知れません◆しかしながら、一度デフレに陥ったらそこからの脱却がいかに 困難かについては十分に学習したはずです。物価の安定とは、インフレのみならずデフレによる負のスパイラ ルも当然考慮すべき点です。デフレ脱却に向けた金融政策をいかに打ち出せるのか。ここは、日銀の腕の見せ どころとも思えるのですが。

(財務アナリスト 浦邊 謙佑) HP:ぜいりし.com 浦邊剛至税理士・行政書士事務所 ブログ:会計事務所の一日