V.背中で表すリスペクト

7月1日、埼玉西武ライオンズの選手全員が、かつて西鉄ライオンズの黄金期を支えた故稲尾和久氏の現役時代 の背番号24番をつけてゲームに臨みました。 メジャーリーグではジャッキー・ロビンソン・デーという日が設けられており、近年では全チームの全選手が故 ロビンソン氏の現役時代の背番号であった42番をつけてプレーを行ないます。 それに倣ったのかどうかはわかりませんが、関係者にとっては非常に感慨深いものであったはずです。何しろ稲 尾氏は「神様、仏様、稲尾様」と呼ばれた伝説の名投手です。 そんな稲尾氏が生前、日本経済新聞の「私の履歴書」というコラムを担当されたことがありました。その中で強 く印象に残った部分は、同氏が最も投げにくかった打者について触れたところでした。 その選手とは、当時新人だった長嶋茂雄氏でした。稲尾投手の代名詞といえば魔球とも言われたスライダーなの ですが、実はそれを生かすためのシュートが一番の得意球であり、その配球で打者を打ち取るのが投球パターン でした。 しかし、なぜか長嶋氏にはどう投球の組み立てをしても打たれてしまうという印象を持ったそうです。その道の 達人でしか感じ取ることのできない感覚だったのでしょう。もちろん、後の長嶋氏の活躍を早くから予感してい たことには間違いありません。 こんな試みを通じて往年の名選手をたたえ、進化した形で現在へと続けて行く姿勢は野球界のレベルアップにも つながるのかもしれません。 余談ですが、デイリースポーツ紙で掲載されるAKBとは、新井・金本・ブラゼルのことです。

(覆面ライター 辛見 寿々丸)