I.増税の前にすべきこと
ウィンブルドン現象。この言葉を死語にできるかどうかの注目を集めたテニスのウィンブルドン大会。マリー
選手の健闘はあったものの、残念ながら優勝はかないませんでした◆そんな中、消費税増税法案が衆議院で可
決されました。すでに参議院に議論の場を移したわけですが、政権与党である民主党が分裂したとはいえ、民
自公の3党合意のもと同院でも可決される状況にあることは間違いなく、消費税増税も現実的なものとなりま
した◆その一方、「増税する前に云々」という意見も多くあります。今回は、その「云々」という部分につい
て考えてみたいと思います。代表的なものとしては、増税する前に政府が徹底して無駄を削減すべきだという
ものです。その中でも、国会議員定数の削減と公務員給与の削減についての意見が強いようです◆国会議員や
公務員の方々の肩を持つわけではありませんが、国会議員や公務員の数は他の先進国と比べても最低レベルで
す。事実はそうであるにもかかわらず、なぜこんなにも風当たりが強いのでしょうか。しかも、国会議員や公
務員の給与を削ってもいくらの財源も生み出さないこともわかっているはずです。どうやら、ここには量では
なく質の部分に問題がありそうです◆国民に役立つ法案をスピード感を持って成立させ、行政サービスの向上
に常に果敢に取り組む姿勢を見ることができれば、実は質の問題であって量の問題ではないという勘違いに私
たちも気がつくはずです◆財政の無駄の削減にも同様の勘違いがあります。例えば、公共工事を減らせば建設
関連労働者の所得は減り、医療の補助を減らせば患者の負担が増えます。誰かが利益を得て、誰かが損失を被
るという単純な構造です。つまり、国民全体の負担が減るわけではなく、それまでの政府の支出により利益を
得ていた国民がその利益を受けられなくなるだけのことです◆にもかかわらず、私たちは新たな財源が生まれ
てくるものだと思い込んでしまいます。政府の支出が減った分、私たちに税金とは別の形でその負担あるいは
所得の減少ということが生じるだけに他なりません。決して、政府が身を削れば私たちの負担が減るというこ
とはないのです。このことからも、国民間の再配分の構造を再構築すべきという結論にたどり着きます。