II.国家財政の健全化
最近書店を訪れると、「経済ニュースのウソ」であったり「財務省の云々」といったテーマの書籍をよく見かけま
す。と思っていたところ、ある日の日本経済新聞でも同様のことがとりあげられていてチョッとビックリしました。
もちろん、新聞記事の内容はそれらの書籍で主張されていることに対する反論でした◆私自身もそれらの書籍をす
でに何冊か購入して読んでいました。その内容については詳細に触れませんが、新聞記事の内容というよりはその
伝え方が不適切であるとか、日本銀行の金融政策についての指摘が多かったというのが私の感想です。経済ニュー
スがウソであると言われれば、伝える側の反論も当然なのかもしれません◆そんな中、5月下旬に財務省のホーム
ページに国の貸借対照表なるものが公開されました。ただし、平成22年度(平成23年3月31日現在)のもの
ですから、1年以上も前の状態です。ここから見て取れるのはと続けたいのですが、実はこれがどれだけ正確な財
務書類なのか私にはよくわかりません◆なぜならば、現在の欧州債務危機の発端となったギリシャにおいては、時
の政権がこの財務書類を粉飾するという考えられないことが行われていたからです。わが日本においてはこんなこ
とは絶対にないと思ってはいるのですが◆また、同省のホームページでは国の財政を家計にたとえたものが掲載さ
れています。小欄でも同様の事を行ないましたし、各メディアも同様でした。こういった試みがどちらが先だった
のか明確な記憶はありませんが、ある意味こういったたとえは非常にわかりやすいものであることは否定しません。
しかしながら、問題の本質は家計にたとえられた借金は誰から借りているものなのかという点です◆前号では、現
在の日本経済の資金循環の構造について少し考えてみました。政府の債務を家計や企業が支えているのが現状であ
り、この構造の持続可能性が一番の課題だと指摘させていただきました。つまり、家計にたとえるのであれば夫が
妻から借りているのか、あるいはその逆なのかわかりませんが、他人からの借入ではありません。理由は日本国債
のいまの国内消化率は90%を超えているからです。問題は、夫あるいは妻がお金を貸すだけの資力がなくなった
ときです◆わが国においてももちろん同様です。現状が持続可能だという保証は何もありません。国家財政の健全
化は喫緊の大きな課題であるとともに、最大の国益でもあると思います。と同時に、増税だけの議論では国家財政
の健全化はありえません。