I.国債の信用低下の影響は?
前号では、日本国債の信認について触れました。今回は国債の信用低下が私たちの暮らしや経済にどう影響するの
かについてもう少し詳しく考えてみたいと思います◆国債の格下げが続くと国債の金利は上昇しやすくなります。
信用が低下した国債はマーケットで売れなくなり、その価格は下落し、その下落した分、金利は上昇します。信用
の低い国債ですから高い金利でなければ買い手がいないと言い換えてもよいでしょう◆国債金利は他の金利とも連
動しています。住宅ローンの金利も当然上昇しますから、返済額が増えて家計を圧迫することになります。お金を
借りている企業も同様です。一方、預貯金の金利は上昇し、受け取る利息は増えます。良い点と悪い点両方ありま
すから、それぞれ各人の立場によって評価は異なるかもしれません◆しかし、個人や企業の投資活動が活発な結果
として、金利が徐々に上昇するのであれば良いのですが、このケースでは、日本国債の信用低下を原因とする「悪
い金利上昇」の典型ですから、問題は深刻です◆すでに日本国債の価格が下落した場合の影響額を試算を公表して
いる銀行もありますが、こちらも大変です。多くの国債を保有しているわけですから、多額の損失が発生します。
その損失を埋めるためにかつてのような「貸し渋り」が起こり、お金を借りたい企業が資金調達できずに資金不足
による倒産が増える可能性もあります◆国家財政も大変です。経済活動が萎縮し、不況になるわけですから税収は
減ります。そこに追い討ちをかけるように、国債金利の上昇により国債の利払いが増えますから、まさに「往復ビ
ンタ」といったところでしょうか◆年金や医療などの社会保障費は削減され、公共事業費の削減により、さらに景
気が冷え込むことも予想されます。新規の国債発行をするにも高い金利でなければ引き受け手はいないでしょうし、
多少の増税では焼け石に水です。まさに負のスパイラルです◆なんだかとっても暗い気持ちになってしまいます。
ただし、ちょっと考えてみましょう。あくまでもその前提は「日本国債の信用低下による金利上昇と価格下落」で
す。この課題を解決するのは簡単ではないかもしれません。ただ、方法はいろいろあります。悲観的になる必要は
ありません。