IV.無対価合併の適格判定における注意点 その三
前回は、無対価合併の場合の税制適格要件とその注意すべき点について触れました。 今回は、支配関係及び完全支配関係の適格判定における「一の者」と、無対価合併の適格判定における「一の者」と の違いについて触れてみます。 組織再編税制における適格判定は、法人間の資本関係が「支配関係」又は「完全支配関係」に該当するかどうかが一 つの問題となります。 支配関係、完全支配関係には、一方の法人と他方の法人がそれぞれ発行済株式等の50%超を「一の者」に直接又は間 接に保有される「法人相互の支配関係」、一方の法人と他方の法人がそれぞれ発行済株式等の100%を「一の者」に 直接又は間接に保有される「法人相互の完全支配関係」が含まれます。 この場合の「一の者」とは、法人であれば単一の法人となりますが、個人の場合には、その一個人とその者と特殊関 係のある親族その他の同族関係者を含みます。 例えば、兄が100%直接保有するA社と、弟が100%直接保有するB社との間には、この兄弟という「一の者」による 法人相互の完全支配関係が成立します。 ただし、無対価合併の場合の適格要件である「一の者」とは異なります。この場合の「一の者」とは、個人の場合に はその個人ただ一人を指し親族その他の同族関係者は含まれません。(企業会計コンサルタント 比留川 益朗)