I.「課題先進国日本」国債の信用度
米格付け会社ムーディーズが将来の日本国債の格下げを示唆しました。同社によれば「社会保障と税の一体改革」
が進まないと長期財政の安定性に影響が出かねないという理由からだそうです。同社は日本国債の格付けを昨年8
月に一段階引き下げたばかりです◆格付け会社そのものにどれだけの調査能力があり、どのように分析しているの
かは、はなはだ疑問です。なにしろ、08年の金融危機前にはサブプライムローン関連の債券を証券化した金融商
品に最上級の格付けを行っていたわけですから、その信用性をどう評価したらよいのかわかりません。にもかかわ
らず、格下げの際にはメディアは大きく取り上げ、時の首相や財務相に記者が必ず質問を投げかけます◆一方、欧
州の債務危機問題が深刻になった現在ではCDS=クレジット・デフォルト・スワップという用語をよく目にします。
CDSは債務不履行の損失をカバーする一種の保険のようなもので、いわゆるデリバティブ=金融派生商品の一つ
です。国債を対象とするCDSもあり、市場で取引されています。この指標の方が客観性が高く、国債の信用度を
図るには適切なのかもしれません◆今現在、日本国債のCDSの契約料=保険料は高くはありません。むしろ低水
準といったほうが適切です。しかし、いずれにせよ日本国債の信認が落ちることは深刻な問題ではあります。ここ
は、謙虚に様々な意見を傾聴すべきでしょう◆懸念されるのは、昨年は31年ぶりに貿易収支が赤字になりました。
もちろん震災の影響が大きかったことは間違いありませんが、今後もこの状態が継続するのではないのかという点
です。歴史的な円高が続き、貿易立国であったはずのわが国が苦境にさらされています◆もし経常収支が赤字にな
ってしまったら、これまでのようにほぼ国内だけで国債の消化をすることはできなくなると考えられます。そうな
ると、日本国債の金利が上昇し国債価格は逆に下落することが予想されます。一体改革は一定の成案を得て、次の
課題に取り組むべき時ではないでしょうか。わが国は課題先進国として各国からその対応が注視されています。ぜ
ひとも様々な課題を克服して、世界にそのお手本を見せたいものです。