II.改革をリードするのは誰なのか

欧州の債務危機問題。収束に向かうどころか、全世界に影響を及ぼす非常に深刻な事態になっています。ギリシャに 端を発した今回の危機ですが、思い返してみれば2年前のギリシャ政府の債務隠しの発覚がその始まりでした▲わが 国でもオリンパスという日本を代表する企業が過去の損失隠しを行っていたことを発表しました。その手法は飛ばし という方法なのですが、ここまで発覚しなかったわけですから複雑なスキームで損失隠しが行われていたことが推察 されます▲ギリシャの場合は政権交代。オリンパス社の場合は英国人社長の就任が発覚のきっかけになりました。国 家による粉飾と私企業による粉飾とは問題の大きさが異なるかもしれませんが、いかに私企業といえどどんな企業も 公にも大きな責任があります。オリンパス社がその自覚に欠けていたことはなんとも残念でなりません▲そんな中、 もめにもめていたTPPへの交渉参加をついに政府は決断しました。推進派・慎重派それぞれの主張はもっともなこ とだという理由からではありませんが、私はどちらの立場でもありません。皆さんに怒られそうですが極端に言えば どうでも良いことだと思っています。問題の本質はTPPへの交渉参加ではなく、わが国の抱える根本的な課題の解 決のはずです▲TPPへの交渉参加に関連して、唐突に安全保障の問題を取り上げるのもどうかとは思いますが、安 全保障上、沖縄の基地問題も大きな課題の一つであることも間違いないことです。TPPの問題を日米間の外交の問 題として捉えるのであれば、基地問題も日米間の大きな外交上の問題として同じテーブルにのってくるべき大きな課 題です。私自身はこちらの問題のほうがはるかに解決に困難が伴う問題だと思うのですが▲さらに、税と社会保障の 問題です。6月にとりあえずの成案を得たのかと思った矢先、年金についての問題がにわかに騒がしくなってきまし た。支給年齢の引き上げ、加入対象者の拡大など様々な検討が行われています▲オリンパス社のケースでは外国人社 長の就任。TPPの場合は外国からの圧力。常にわが国は外圧がなければ改革を行うことができない国だと思われて いるのでしょうか。歴史的にも、ペリー・マッカーサーといった諸氏の名前が思わず浮かんでしまいます。確かに日 本の国民皆保険制度などは優れた制度だとは思います。しかし、年金問題なども含め将来の持続可能性を含め大きな 改革は必要です。外圧がなければ改革が進まない国。日本は決してそんな国ではないはずです。

(財務アナリスト 浦邊 謙佑) HP:ぜいりし.com 浦邊剛至税理士・行政書士事務所 ブログ:会計事務所の一日