II.既成概念や手法は超えられる?!
今年は大きな記録や偉業が途絶えた一年になりそうです。野球界でのイチロー選手。そして、もう一つ取り上げたいの
が将棋の王座戦での羽生氏の連覇記録。イチロー選手については大きく扱われましたので、将棋の王座戦に少しだけ触
れます▲羽生前王座の20連覇を阻止したのは渡辺明氏。王座位奪取後に自宅で取材を受ける渡辺氏を紹介する写真は、
パソコンで将棋の研究をする彼の姿でした。将棋棋士となれば将棋盤を前に研究というのがお決まりなのですが、あえ
てこの写真を選択したのにも渡辺氏らしさが見て取れました▲ところで、この王座戦のスポンサーは日本経済新聞社。
同社の日本経済新聞に「大機小機」というコラムがあるのですが、こんなことが紹介されていました。金融市場で今、
はやっているジョークについてです▲どの国にもなんとも身につかない教育があるとのこと。それは、中国のマナー教
育、米国の反戦教育、イタリアの純愛教育。わが日本の場合は英語教育、そしてギリシャの金銭教育。的を得ていると
は思いますが、笑うに笑えないジョークだというのが実感です▲欧州連合統計局の調べによれば、11年8月時点のギ
リシャ全体の失業率は16.7%。特に若年層の失業率は42.9%ですから、2人に1人が失業者という異常事態です。この
状況は、ギリシャに限ったことではなく欧米の多くの国で若年層の失業率は二桁です。わが国においてもそれに迫ろう
かという高水準にあります▲若年層の高い失業率は、将来の貧困層の増加につながります。さらに、いわゆる中間層は
グローバル化の波の中で大きな打撃を受けています。その大きな理由は、新興国の台頭とコスト競争にさらされる企業
の雇用や生産拠点の海外移転の加速です。結果として、中間層から貧困層への脱落ということになります▲かつて、わ
が国も1億総中流=中間層と言われた時代がありました。ところが、今や現野田政権は中間層の厚みを増すことを政策
課題としています。冒頭ご登場いただいた渡辺氏は27歳ですから、若年層の1人です。しかし、若くして永世竜王とい
う称号を得ている将棋界の第一人者でもあります。将棋盤ではなくパソコン。今までの概念や手法は通用しない。そう
語っているような姿に何かヒントがあるのかもしれません。