IV.企業組織再編とその課税関係

今回は、企業組織再編の課税関係について触れます。 企業組織再編とは、合併・分割・現物出資などを行うことをいい、法人税法の取扱い上、適格組織再編と非適格組織 再編に分かれます。 適格組織再編の形態は、大きく二つに分類されます。一つは、企業グループ内の組織再編成、そして、共同事業を行 うための組織再編成です。それぞれの形態毎に一定の適格要件が定められています。 また、適格組織再編以外の組織再編を非適格組織再編といいます。 適格組織再編を行った場合と、非適格組織再編を行った場合の課税関係の違いを、合併を例に挙げてみます。 適格組織再編による合併(適格合併)を行った場合、被合併法人が合併法人にその有する資産及び負債の移転をした ときは、その合併法人にその移転をした資産及び負債のその適格合併に係る最後事業年度終了の時の帳簿価額による 引継ぎをしたものとして取扱います。従って、譲渡損益は生じないため課税は繰延べられます。 また、被合併法人の株主側では、「みなし配当」は認識しません。 非適格組織再編による合併(非適格合併)を行った場合、被合併法人が合併法人にその有する資産及び負債の移転を したときは、その合併法人にその移転をした資産及び負債のその合併の時の価額(時価)による譲渡をしたものとし て取扱います。従って、譲渡損益が生じ課税関係が生じます。 また、被合併法人の株主側では、「みなし配当」が認識され課税の対象となります。 税務上、組織再編において最も重要なのは、法人の行った組織再編が適格組織再編に該当するか否かの判断です。 ただし、形式的には適格合併の要件を満たしている場合であっても、その実態が租税回避行為と認定された場合には、 「行為計算の否認」規定により適格合併と認められないので注意が必要です。

(企業会計コンサルタント 比留川 益朗)