II.統計値の正体を見極める
▲5月6日米労働省が米国の雇用統計を発表しました。この雇用統計はマーケットの関心が非常に高いということを
以前にご紹介しました。発表によれば、非農業部門の就業者数は24.4万人増えましたが、逆に失業率は9.0%に悪化し
ました。これをマーケットは好意的に受け止めているようです。▲日本では、雇用関係の統計は総務省からは失業率、
厚労省からは有効求人倍率の二つが発表されます。どちらも総数ではなく率であることに着目してください。率です
から分母と分子がそれぞれあります。▲さらに、農水省では食料自給率というものを発表しています。カロリーベー
スでは40%ということなのですが、同省のホームページを見ていてビックリしたことがあります。ある献立で使用さ
れている卵の自給率です。どのくらいだと思いますか?なんと10%と表示されています。どこのスーパーへ行っても
外国産の卵にお目にかかることはなかなかありません。しかし、10%と表示されています。▲その理由については農
水省にお任せするとしても、食料自給率をカロリーベースで発表している国はわが国だけだと聞いています。それに
もかかわらず、各国との比較のグラフもありわが国の低さがことさら協調されています。各国ともカロリーベースで
計算をしていないのだとすれば、おそらく農水省が推計したものだと思われます。▲そんな中、藻谷浩介氏の著書で
ある「デフレの正体」という本を再読する機会がありました。きっかけは、同氏が復興構想会議の委員に選出された
ことでした。同著の内容については各論あるようですし、私自身もこの著書ですべてが解明されているとも思えない
のでここでは触れません。ただ、重要な指摘があることは間違いありません。▲同著で特筆すべきは各種統計の細か
い収集と分析です。統計といえば、わが国では平均値の発表が多いような気がします。例えば、所得であったり一世
帯あたりの支出であったりです。よそと自分を比較するにはこの平均というのはありがたいものかもしれません。▲
しかしながら、率だったり平均という数字だけを見ていては、本質を見失うことにもなりかねません。総数というも
のにも着目すべきです。国家全体として個人所得の総額はどう推移しているのか、個人消費の総額はどうなのか。▲
例えば、こんな例もあります。国民年金納付率という統計です。現在は、二つの数字が発表されています。一つは、
従来どおりのもの。これは、分母から納付を免除された人を除外したものです。もう一つは、これでは実態が良く把
握できないということで、この免除者も分母に加えた数字です。後者の方が当然納付率は低くなるわけです。これが
実態です。▲統計に使用されるデータ=数字のひとつひとつを自分なりに分析や検証することなしには、様々なこと
の実態を把握することはできません。