I.震災特例法が成立
平成23年4月27日に「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」(震災特例法)が
施行されました。従来の災害時の税制上の優遇に加え、次のような優遇が受けられるようになりました。
<所得税関係>
1.住宅、家財等について生じた損失について、その損失額を平成22年分の総所得金額等から雑損控除として控除で
きる。雑損控除を適用してその年分の総所得金額等から控除しても控除しきれない損失額についての繰越期間を5年
とする。
2.事業所得者等の有する棚卸資産、事業用資産等につき東日本大震災により生じた損失について、平成22年分の事
業所得の金額等の計算上、必要経費に算入することができる。この場合において、青色申告者について平成22年分の
所得において純損失が生じたときは、被災事業用資産の損失も含めて、平成21年分の所得への繰戻し還付ができる。
3.個人が、平成23年3月11日から平成25年12月31日までの間に支出した震災関連寄附金について、寄附金控除につ
いての控除対象限度額を、総所得金額等の100分の80相当額とする。認定特定非営利活動法人及び共同募金会連合会
に対して支出した震災関連寄附金のうち被災者の支援活動に必要な資金に充てられるものについて、その寄附金の額
が2,000円を超える場合には、所得控除との選択により、その超える額の100分の40相当額(所得税額の100分の25相当
額を限度)をその年分の所得税額から控除する。
4.勤労者が、東日本大震災により被害を受けたことにより、平成23年3月11日から平成24年3月10日までの間に、
勤労者財産形成住宅貯蓄及び勤労者財産形成年金貯蓄の目的外払出しを行う場合には、その貯蓄に係る利子等に対する
遡及課税等は行わない。
5.住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除等の適用を受けていた住宅が東日本大震災により居住の用に供
することができなくなった場合においても、控除対象期間の残りの期間について、引き続き税額控除を適用すること
ができる。
この他法人税に関するもの、相続税・贈与税に関するもの。消費税に関するもの登録免許税に関するものについても
同時に施行されています。くわしくは http://www.nta.go.jp/index.htm を参照してください。
または最寄の税務署や税理士にお問い合わせください。
II.統計値の正体を見極める
▲5月6日米労働省が米国の雇用統計を発表しました。この雇用統計はマーケットの関心が非常に高いということを
以前にご紹介しました。発表によれば、非農業部門の就業者数は24.4万人増えましたが、逆に失業率は9.0%に悪化し
ました。これをマーケットは好意的に受け止めているようです。▲日本では、雇用関係の統計は総務省からは失業率、
厚労省からは有効求人倍率の二つが発表されます。どちらも総数ではなく率であることに着目してください。率です
から分母と分子がそれぞれあります。▲さらに、農水省では食料自給率というものを発表しています。カロリーベー
スでは40%ということなのですが、同省のホームページを見ていてビックリしたことがあります。ある献立で使用さ
れている卵の自給率です。どのくらいだと思いますか?なんと10%と表示されています。どこのスーパーへ行っても
外国産の卵にお目にかかることはなかなかありません。しかし、10%と表示されています。▲その理由については農
水省にお任せするとしても、食料自給率をカロリーベースで発表している国はわが国だけだと聞いています。それに
もかかわらず、各国との比較のグラフもありわが国の低さがことさら協調されています。各国ともカロリーベースで
計算をしていないのだとすれば、おそらく農水省が推計したものだと思われます。▲そんな中、藻谷浩介氏の著書で
ある「デフレの正体」という本を再読する機会がありました。きっかけは、同氏が復興構想会議の委員に選出された
ことでした。同著の内容については各論あるようですし、私自身もこの著書ですべてが解明されているとも思えない
のでここでは触れません。ただ、重要な指摘があることは間違いありません。▲同著で特筆すべきは各種統計の細か
い収集と分析です。統計といえば、わが国では平均値の発表が多いような気がします。例えば、所得であったり一世
帯あたりの支出であったりです。よそと自分を比較するにはこの平均というのはありがたいものかもしれません。▲
しかしながら、率だったり平均という数字だけを見ていては、本質を見失うことにもなりかねません。総数というも
のにも着目すべきです。国家全体として個人所得の総額はどう推移しているのか、個人消費の総額はどうなのか。▲
例えば、こんな例もあります。国民年金納付率という統計です。現在は、二つの数字が発表されています。一つは、
従来どおりのもの。これは、分母から納付を免除された人を除外したものです。もう一つは、これでは実態が良く把
握できないということで、この免除者も分母に加えた数字です。後者の方が当然納付率は低くなるわけです。これが
実態です。▲統計に使用されるデータ=数字のひとつひとつを自分なりに分析や検証することなしには、様々なこと
の実態を把握することはできません。
III.Windows PC の節電設定
夏の電力需要増加に向けて、さまざまな節電方法や商品が工夫されているようです。
パソコンは一般の家電製品に比べると消費電力が少ないそうですが、WindowsPCの設定を変更することで約30%の節
電ができるとマイクロソフトが発表しました。
会議や食事などで席を離れるとき、1時間45分以内であればシャットダウンよりもスリープ(スタンバイ)のほう
が消費電力を抑えることができるとのことです。
OSが自動的にスリープ状態になるまでの時間の他、ディスプレイの電源・ハードディスクの電源が自動的に
OFFになる時間を細かく指定したい場合は、コントロールパネルの「電源オプション」から設定します。
マイクロソフトのサイトで配布している「自動節電プログラム」を使うと自動で節電に有効な設定に変更されます。
ディスプレイの輝度を下げることも、消費電力の削減になります。
他にもスクリーンセーバーをシンプルなものにする、USB接続の機器は使用時以外ははずしておく、電力ピーク時に
はノートパソコンをバッテリ駆動させるといった節電策が紹介されています。
無理のない範囲で、できるだけ節電に協力したいですね。
☆マイクロソフト Windows PC 節電策 http://technet.microsoft.com/ja-jp/windows/gg715287
(Webデザイナー)
IV.法人の消費税及び地方消費税の経理処理
消費税及び地方消費税の経理処理には、税抜経理と税込経理があります。
原則として法人は、すべての取引についてどちらかの経理処理を選択適用します。
ただし、例外として、「売上」・「仕入」・「固定資産」・「経費」の取引ごとに税抜経理と税込経理を併用し
て選択適用することが一定の条件の下で認められています。
この場合には、「売上」に係る取引について必ず税抜経理を適用しなければなりません。
「売上」に係る取引について税込経理を適用した場合には、「仕入」・「固定資産」・「経費」に係る取引のす
べての取引について税込経理を適用しなければなりません。
なお、免税事業者は、税込経理を適用しなければなりません。
この選択適用した経理処理の違いにより、法人税法上の取扱いが変わるものがいくつかあります。
例を挙げてみます。
減価償却資産を購入した場合、「少額の減価償却資産」に該当するかどうかは取得価額10万円未満かどうかで判
定をします。税抜経理の場合には税抜の取得価額で判定し、税込経理の場合には税込の取得価額で判定をします。
例えば、税込100,000円(税抜95,238円)の減価償却資産を購入した場合、税抜経理の場合には、税抜の取得価額
95,238円で判定するので一時損金となり、税込経理の場合には、税込の取得価額100,000円で判定するので資産計
上します。
飲食等の費用(その法人の役員・従業員、これらの親族に対する接待等のための支出は除きます。)で一人当た
り5,000円以下の支出について、一定の事項を記載した書類を保存している場合は交際費等の範囲から除かれる規
定があります。この金額の判定においても税抜経理は税抜で、税込経理は税込で金額の判定をします。
例えば、一人当たり税込5,200円(税抜4,952円)の飲食等の費用を支出した場合、税抜経理の場合には、税抜の
4,952円で判定するので交際費等の範囲から除かれますが、税込経理の場合には、税込の5,200円で判定するので
交際費等に含まれます。
(企業会計コンサルタント 比留川 益朗)
V.震災に伴い適用される特例措置
震災の影響により、今なお不自由な生活を余儀なくされている方が数多くいます。
被災した方を支援するための一つの方法として義援金があります。個人が国や地方公共団体などに対して寄附金を
支出した場合には所得控除(寄附金控除)を受けることができます。今般施行された震災特例法では、従前の制度
に加え大幅な拡充が図られています。詳細についてはトップストーリー(震災特例法が成立)の3でぜひご確認く
ださい。
また、義援金がその配分の問題から被災者の手元へなかなか届かないという現実が大きな問題となっています。
別の方法としてふるさと納税を利用することも考えられます。この制度の利点は、被災した市町村を指定しての寄
附が可能です。つまり、行政にすべての配分を任せるのではなく自分自身で支援したい市町村への寄附ができます。
被災された方の中には事業所が災害を受け、休止又は廃止したために、休業を余儀なくされ賃金を受ける事が出来
ない方がいます。そのような方の特例措置として、実際に離職していなくても失業給付を受給する事ができます。
また、災害救助法の指定地域にある事業所で、一時的に離職を余議なくされた方については、事業再開後の再雇用
が予定されている場合であっても失業給付を受給できます。該当される方は最寄りのハローワークに問い合わせて
見て下さい。
(ファイナンシャルプランナー 小林 裕美)