II.日本の底力
▲季節は確実に春、そして初夏へと向かっています。なのにその実感を感じることのできない日々が続いています。
申し上げるまでもなく、大震災の影響があまりにも大きすぎたということがそのわけであることは間違いありません。
▲そんな中、被災地でも復旧、復興への取り組みが始まっています。当面の最も大きな課題はこの大震災、大津波
そして原子力発電所の事故と追い討ちをかけられた被災地や被災者に対する対応をどうするのかということに尽きる
と思います。しかしながら、震災前に抱えていたわが国の諸問題から目を背けるわけにも行きません。▲事前の予想
通り4月7日、欧州中央銀行=ECBは政策金利の引き上げを決定しました。その理由は、資源価格を中心とする物
価上昇の行き過ぎを防ぐ狙いと報じられています。また、米国においてもQE2と呼ばれる金融緩和策第2弾の期限
が6月末と迫っています。予定通り終了するのか、それとも延長されるのか。市場は注意深くその行方を見守ってい
ます。▲その一方、着目すべき点はECBのみならず世界の各機関が、わが国の震災により世界経済の先行きが不確
実性が高まっていると指摘していることです。震災直後の株式市場は大きく下げたにもかかわらず、その後海外投資
家の資金は日本へ向かいました。単に割安感が理由ではなく、この震災により日本製の部品・材料が届かないという
事態に世界の製造業が震撼したことがその第一の理由であると考えられます。▲被災し、操業停止した福島県いわき
市の日産自動車のエンジン工場を訪れた同社社長のゴーン氏の姿はその象徴でしょう。さらに彼は、こう明言してい
ます。「外国人の私だから言える。日産の競争力の源は日本だ」。彼の言う競争力とは、国際競争力のことに他なり
ません。▲日本の国際競争力の低下が様々な場面で強調されてきました。しかし、私は決してそんなことはないと思
っています。多くのデータからもそれは説明することはできます。残念なことではありますが、今回の震災で逆に日
本の存在感が示されたわけです。▲首相や東京電力のトップのリーダーシップを問題視する意見もたくさんあります。
けれども、そんなことはどうでも良い。批判をしていても私たちの未来はありません。このような状況下でも、名も
なき普通の人たち一人ひとりが現場で汗をかきこの国を支えています。それが日本という国であり、日本社会でもあ
ります。決して、忘れてはならないことだと思います。