II.描いてほしい「将来の展望」
▲日本のお隣の国である韓国と米国がFTAの締結に合意したことが報じられました。FTA、EPAそして
TPPについては、先月号で簡単にその内容や違いに触れました。今回の合意に関しても、両国相互の譲歩が
ありました。FTAは基本的には二国間での交渉ですが、お互い譲ることのできない点があるわけですから、
そこが一番の問題になってくるわけです。▲一方、芸能界に目を転じてみると、最近特にK−POPと呼ばれ
る音楽分野での韓国勢の日本進出が目につきます。かつての韓流ブームとも少し異なっている印象を受けます。
私も何年か前にK−POPファンになり、よく聴くようになりました。J−POPや英国・米国の楽曲とも異
なり、なんとなく聴き心地が良いのです。▲NHKの番組で取り上げていたことですが、この進出には緻密な
戦略の上に成り立っていることを感じました。さらに、日本にとどまらず他の各国へも進出あるいは進出の計
画が着々と進んでいることも知りました。さながら、K−POPアイドルの輸出といったほうが適切かもしれ
ません。▲韓国といえば、出生率が非常に低い国として有名ですし、わが国ほど急速ではないとしても、将来
は少子高齢化が進む国です。国内市場はどうかといっても、人口が5千万人にも満たない国ですから内需に経
済成長を期待するのは難しいのが現実です。▲そこで、韓国は他国の市場に目をむけ積極的な輸出による成長
を目指したのだと考えられます。サムスン、LG、現代といった韓国を代表する企業の韓国国外でのシェアは
ものすごいものがあります。しかし、農業分野に犠牲を強いた感があるのも事実です。ここは、政策的にどう
カバーするのかが政府の腕の見せ所でもあります。▲翻って、わが日本の場合はどうでしょうか。韓国を見習
えとはいいませんが、戦略がまったく見えてこないというのが現状です。TPPの問題についても、前へ進ん
でいる様子は伺えません。▲常に選挙を気にして、国民に耳あたりの良い政策のオンパレードが続きます。
そして、挙句の果てには財源がないから云々ということですべてが中途半端な結末を迎えてしまいます。
たとえ私たちにとって耳が痛い政策であっても、将来の展望が描けるようなものであれば、その政策は支持さ
れると思います。▲例えば、消費税の問題についても世論調査の結果を見れば、過半数は将来の税率アップを
容認していることがわかります。私は現行の税制のままでの消費税の税率アップを容認する立場はとりません。
既存の税制をチョコチョコいじるよりも、抜本的な見直しが必要だと思っています。国税と地方税のあり方も
含めてです。あくまでも消費税はそのうちの一つとして論ずべきものだと思います。▲政権交代により与党に
なった民主党。その政策の一丁目一番地は地域主権の確立だったと記憶しています。税の問題は、地域主権に
大きくかかわることです。今のように、国から地方へ交付税として単に配分する仕組みが続く限り、地域主権
の確立は不可能だと思います。まずは、地域が独自に税収を確保する仕組みづくりを構築した上で、地域間で
生じた偏在を補正するのが政府本来の役割ということになるのではないでしょうか。