III.世界経済の活性化と日本の針路
▲「日米関係のこじれ」に端を発したのかどうかについてはよくわかりませんが、日米関係に続き日中関係、日露
関係がこのところギクシャクしています。このギクシャク感は、今に始まったことではなく、私たちが常々感じて
いることの一つです。どの政権下であっても、外交問題というのは非常に厄介な問題であることは間違いないでし
ょう。▲目を転じてみると、別の問題も大きなテーマとなっています。最近よく聞くのが、FTA、EPA、TPP
という言葉です。インドとのEPA締結の合意が報じられたことは記憶に新しいところです。▲これらFTA、
EPA、TPPという言葉についてその内容や違いについて少し整理してみたいと思います。▲FTAは自由貿易
協定の略称で、多くは2国間で物品の関税やサービスの規制を撤廃し、経済活性化を目指すという内容です。EPA
は経済連携協定の略称で、FTAより範囲が広く、人の移動や投資ルールの整備も対象にしています。▲本来は、
WTO=世界貿易機関が、その大きな役目を担っていたはずです。ところが、ここでの多国間交渉が暗礁に乗り上
げてしまいました。多国間交渉は、なかなかまとめづらいというのが現実です。当然のごとく、各国ともそれぞれの
国益を主張してくるわけですから、なかなか合意が得られないのは無理もないことかもしれません。最近の国際会議
においてもなかなか多国間交渉がまとまらないという場面をよく目にします。▲最後に、TPPについてです。最近
最もよく聞く言葉かもしれません。TPPは環太平洋経済連携協定の略称です。TPPは、ほぼすべての関税を撤廃
するという強力な内容です。TPPへは米国も参加を表明しています。米国の場合は、アジアで台頭する中国に対抗
するという狙いがあるとの見方が一般的です。▲日本はといえばその参加をめぐって大変な議論になっています。
与野党のみならず、経産省や農水省も巻き込んでの大議論です。繰り返しになりますが、TPPはほぼすべての関税
を撤廃するという強力な内容です。従来、わが国はコメなどの農産物を関税撤廃の対象外にしてきたわけですから、
今までのやり方が通用しなくなる可能性もあるわけです。つまり、コメなどの農産物についても関税の撤廃を余儀な
くされるかもしれません。▲TPPに参加するかどうか。将来に向かっての非常に重要な決断を求められているので
す。個人的には、TPPへの参加は必要だと思います。しかし、その前提として戦略的なシミュレーションを十分行
ったうえで、TPPのルール作りに積極的な発言ができるのかどうか。TPPの枠組みの構築に、わが国のリーダー
シップを期待したいものです。