III.企業会計と税法 〜利益と所得の違い〜

前々回で、企業会計原則に基づいて計算する利益の金額と、税法に基づいて計算する所得の金額は、異なると いうお話をしました。今回は、利益の金額と所得の金額が、具体的にはどのように異なるのかを一例としてご 紹介します。 法人税法には、「交際費等の損金不算入」という規定があります。(正確には「租税特別措置法・第三章法人 税法の特例・第四節の三交際費等の課税の特例(第六十一条の四)」に規定されています。)事業年度終了日 の資本金又は出資金の額が一億円以下の法人(中小法人)と、事業年度終了日の資本金又は出資金の額が 一億円を超える法人(大法人)とで適用が分かれます。 支出した交際費等について、中小法人については特例がありますが、大法人については全額が損金不算入と なります。(なお、ここではグループ法人税制については考慮していません。)例えば、大法人が税務上の 交際費を5,000万円支出した場合、企業会計上は全て費用として計上されますが、税務上は全額が損金として 計上が認められないため、結果的に利益と所得が5,000万円異なります。 法人税法では、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準により所得を計算しますが、別段の定めを置い ています。 この別段の定めにより、企業会計原則の利益の金額と法人税法の所得の金額の差異が生じます。 別段の定めは、企業会計上の引当金や資産の評価などについても規定しています。

(企業会計コンサルタント 比留川 益朗)