II.白熱教室とサミット
▲最近、「企業内の公用語を外国語にする」という動きがちらほらあります。私事になりますが、私にはこれ
とは逆のことが原因で会社を辞めてしまった友人がいます。その友人は、主に米国人を相手にプレゼンを行う
部署に勤めていました。▲文書やプレゼンは当然ながら、すべて英語です。ところが、上司からはその内容を
日本語に直して報告することを命ぜられたそうです。この作業が、余りにも非生産的で無駄なことだと思った
彼は、大学の研究者へと転進したのでした。▲その彼は、現在は某大学の教授になっています。しかも、そこ
そこの著名人でもあります。後日談になるのですが、その友人が退社後、その彼が勤務していた会社では英語
の猛特訓が行われていることを知りました。何と、NHKの特集番組で取り上げていたのでした。語学がすべ
てとは思いませんが、優秀な社員の流出を防止するために講じた対策のひとつだったようです。▲話題は変わ
りますが、先日テレビで「ハーバード白熱教室@東京大学」という番組を遅まきながら見る機会がありました
。ずいぶん話題になりましたから、既にご覧になった方も多いかと思います。私自身も、超人気講座ですから、
以前から気にはなっていたのでした。▲講座の内容については、放映したNHKのホームページで案内されて
いると思います。テーマは、「イチローの年俸は高すぎる?」「戦争責任を議論する」など。会場は安田講堂
です。参加者には、いろいろな方がいらっしゃいました。講義はもちろん英語で行われます。会場を見渡すと、
翻訳用のイヤホンを使用する方やそうでない方と様々でした。▲私が、ひとつ注目したのは、あるテーマにつ
いての議論の前に教授が説明した「最大多数の幸福の最大化」という英国の哲学者の理論です。「最小不幸社
会の実現」を訴える日本の菅首相を思い出しました。私にとっては、この英国の哲学者の理論の方がしっくり
きますし、そんな論評も数多いようです。「最小不幸社会」というものがうまくイメージができないからです。
例えば他人からは、幸福だと思われていても、本人は不幸だと思っているケースはたくさんあると思います。
なにをもって不幸とするのか。衣食住が足りていればそれは不幸ではないのか。よくわからないのです。▲も
うひとつ注目した場面がありました。「戦争責任を議論する」というテーマでの場面です。会場から、当日一
番の拍手喝采があった場面です。発言者は広島大学の学生でした。彼は、英語ではなく日本語で堂々と議論に
参加し、自分の意見を述べたのでした。広島で生活する彼が論ずる戦争責任についての意見はすばらしいもの
でした。▲冒頭、外国語の重要性に触れましたが、堂々と日本語で議論する学生に対する拍手が多かった場面
に私は注目しました。つまり、発言の中身が最も重要だったわけです。サミットで存在感が薄いと批判された
菅首相ですが、その理由のひとつに「英語ができない」という要因が挙げられたようですが、その中身が一番
の原因ではなかったのではないでしょうか。毎回、出席者が変わる日本です。菅首相に責任を押し付けてしま
うのも、気の毒な感じがします。