V.企業会計と税法〜利益と所得の違い〜

 お客様の会社が確定申告の際、納付税額一覧表というものをお渡ししています。そこには税額以外に「当期利益」  、「所得金額」が書かれています。  この「当期利益」と「所得金額」について、金額が違うのはどうして?と時々質問を受けます。  「当期利益」は企業会計原則に基づいて計算します。企業会計原則とは、企業会計の実務を通じて慣習として形成  されてきたものの中から、一般に公正妥当と認められる基準を要約したものです。  企業会計原則では、一定期間の経営成績を正確に表示することを目的としています。「所得金額」は法人税法の規  定に基づいて計算します。法人税法においても、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算するこ  とを規定していますが、公平性・担税力・政策など観点から別段の定めを置いています。従って、法人税法は、上  記のことに配慮した課税を行うことを目的としています。  よって、「当期利益」と「所得金額」では目的が違うものなので金額も異なります。  ただし、企業会計原則には単一性の原則があります。これは異なる儲けや二重帳簿があるということではなく、真  実の取引に基づいて作成されたひとつの会計記録を元に株主総会提出目的や申告納税目的など、複数の基準に基づ  いて利益や所得などが計算されていきます。    次回は企業会計原則の利益についてみていきます。

(企業会計コンサルタント 比留川 益朗)