II.日本のバランスシート

▲依然として、ユーロ圏の財政不安は収まる気配がありません。それどころか、欧州全体へ波及し、実体経済への 影響も懸念されるのが現状です。「PIIGS」と財政悪化国をひとくくりにして伝えられることが多いようですが、 各国ともその事情は異なります。▲くどいようですが、先月号でも触れたとおり、それぞれが主権国家です。すなわ ち、金融政策以外の財政をはじめとするその他の政策は各国に委ねられているわけですから、一朝一夕に解決とはな らないはずなのです。せっかく、EUとして統合したのですから、この危機を何とか腰をすえて乗り切って欲しいも のです。解決にはユーロ圏解体しかないと言う学者先生もいるようですが、個人的には統合のメリットの方がはるか に大きいと思っています。上手な解決を期待しています。▲先月号では、GDPについて考えてみました。今回は、 わが国の貸借対照表についてです。そんなものが存在するのかと思う方もいらっしゃると思いますが、ちゃんと財務 省のホームページに掲載されています。ただし、07年度のものですが(「国の財務書類」)。 ▲疑問その1です。どれだけ信用できるのか。疑問その2は、公表にどうしてこんなに時間がかかるのか。国は、企 業にもその公表を求めていますから、万が一にも信用が疑われるようなものであってはなりません。さらに、企業に はその期限が厳格に設けられているにもかかわらず、どうしてこんなに遅いのでしょうか。民間企業であれば、処罰 の対象になります。税務申告であれば、一日遅れただけでも大変なことになってしまいます。▲どうしても、私には 国の思惑が見え隠れするような気がしてならないのです。誰がどう見てもこの国の財政状況はひどいものです。ただ、 どれだけどこがそんなにひどいのか、その真実がわからないのです。もし仮に日本の財政が今現在破綻状況だったと したら、何故、円高が進むのでしょうか。ソブリンリスクといいますが、わが国も本当にそうなのでしょうか。リス ク回避で円買いということの説明がつきません。▲以前の号で、日本の財政について触れたことがあります。わが国 の財政に劇的な再建を望むのは無理です。だからこそ 、逆に、国民的な議論なく、安易な増税など決してあっては ならないと思います。

(財務アナリスト 浦邊 謙佑) HP:ぜいりし.com 浦邊剛至税理士・行政書士事務所 ブログ:会計事務所の一日