U.年額の納税額は基本的に変わりません。って本当?

「あしたのニッポン」と題された政府広報で、 一面と二面の2ページを割いて国から地方への税源移譲について触れています。 その中で、所得税と住民税を合わせた納税額は変わらないといっているわけです。  これは、明らかに表現がおかしい。というよりは日本語になっていないかもしれません。 正確には「年額の納税額は、定率減税の廃止に伴い基本的に増えます。」と表記するのが適当でしょう。  昨年に続き各市区町村への問い合わせが殺到しているようです。ちなみに私も問い合わせてみました。 窓口に出られたご担当の方も非常に困った口調でご回答くださいました。 しかしながら、「増税です」という言葉は回答の中で必ず使う方針で、 その区役所は臨んでいるとおっしゃっていましたのが印象的でした。  確かに法律ですから知っているのが当たり前ということかもしれませんが、生活に直結することですから、 きちんと法律成立後に「今後こうなりますよ」と前もって広報しておくというのが筋ではないでしょうか。 特に、サラーリーマンや年金生活者の多くの方々にとって、現行の税制は複雑すぎます。 さらに、「なお、税源移譲とは別に、平成11年に緊急の景気対策として導入された 定率減税が廃止されることに伴う税負担が生じますのでご留意ください。」との記載があります。 ただし、大蔵省が平成10年12月20日発布した平成11年度税制改正の大綱では、 恒久的な減税という項目の中で定率減税についてもはっきり文面でうたわれています。 「恒久的」という言葉がいつのまにか「緊急」という言葉に置き換えられています。 私も辞書で「恒久的」という言葉の意味を調べてみました。そこでは、「永久に変わらないさま。」となっていました。 子供たちに質問されたらなんて答えましょう。困ってしまいました。 納税は、言わずと知れた憲法が定める国民の義務のひとつです。 であれば、なおさら軽々に恒久的という言葉の使い方は、ありえないでしょう。

(税理士 浦邊 謙佑)